令和3年度、第34回介護福祉士国家試験の合格率は72.3%と好調で、受験者数は昨年と比較し1,401人減少しましたが、合格者数は124人も増えました。
実はこの介護福祉士国家試験は2023年1月に実施分より出題基準が変更になったことを皆さんご存じでしょうか。今回は、その内容についてみていきたいと思います。
なぜ出題基準が変更になったのか
2017年10月に行われた社会保障審議会福祉部福祉人材確保専門委員会の報告書により、制度改正や社会状況を踏まえて、介護福祉士の養成課程において教育内容の見直しを検討しようという声が挙がりました。
見直すべき箇所は、「認知症ケアや地域ケア、介護過程の学習内容の学力アップ」そして今まで知る機会があまり無かった「リーダーシップやフォロワーシップ」についてです。
その他には介護過程におけるアセスメント能力や実践力を向上させること、多職種協働によるチームケアを実施するための能力を向上させる目的のためでした。
上記の意見をうけ現行の介護福祉士の養成、教育の内容や方法を整理し、検討チーム(介護福祉士養成課程における教育内容の見直し)では、次のような見直しを実行しています。
1.チームマネジメント能力を養うための教育内容の拡充
2.対象者の生活を地域で支えるための実践力の向上
3.介護過程の実践力の向上
4.認知症ケアの実践力の向上
5.介護と医療の連携を踏まえた実践力の向上
上記の教育内容の見直しを行い、2019年度より新しい教育内容で介護福祉士養成が始まりました。その結果、第35回介護福祉士の試験の出題基準が、新しい教育内容に沿ったものにシフトするというわけです。
第35回の介護福祉士国家試験対処
まず始めに第35回の試験でも、現在の合格基準や試験問題数は今後も継続されます。合格基準の変更が無いということは、合格率の推移もこれまで通り70%前後をキープされると予測されているのです。
しかし、試験問題の予想は難しい部分があります。近年の出題傾向としては、各分野で事例問題が多く出題されています。
事例の対象は高齢者から障害児など幅広いです。特に目立つのは、地域で暮らす当事者への理解、さらにケアの方針を訊ねる傾向が強いことが挙げられます。
各分野の出題傾向を予測してみましょう。「介護」の分野では、基本原則の「共感的理解」、「自立支援」、「利用者本位」の事例を通じて問われる傾向が強いです。
また、介護の実践においては、介護福祉士の基本理念や姿勢を理解しているかがポイントになります。
「こころとからだのしくみ」の分野では、専門の医療的知識が必須です。ケアに関する問題では、身体の機能と構造や疾患の理解、つまり根拠に基づいた具体的な支援を問う出題基準だと予想されます。
「人間と社会」の分野では、近年でも政府が提出している統計資料及び各種白書からの出題基準が多いです。各制度に関しては、概要のみを理解するだけではなく具体的な実態に従った制度の対象と運用の理解が問われるでしょう。
「人間関係とコミュニケーション」の出題基準(予定)の分野では、出題項目が増えています。人材育成やチーム運営の基本を学ぶ事が大切です。それだけでなく、対利用者のみではなく、対職場や職員が対象で管理者として把握すべきことが増えています。
求められている介護福祉士像をイメージすると
〇根拠のある介護過程の展開
〇利用者に対して寄り添う心身のケア
〇介護の理論に基づく
の3つが出題のキーポイントとなるでしょう。
第35回以降の試験対策は、社会福祉士法の改正に関する理解、時代の流行を反映させた制作に関わる問題をマスターしておくことも重要です。
例えば、「SDGS」の実現に向けた介護福祉士の役割、「地域共生社会の実現」は抑えておきましょう。もちろん専門用語の理解に関しては必須になります。
まとめ
今回は2023年実施分からの介護福祉士試験出題基準の変更について見ていきました。学習方法は過去問や参考書で振り返ることが大切です。
ご自身での学習に加えて、介護福祉士国家試験の傾向に精通しているスクールの受験対策講座・教材を利用すると効率の良い学習が出来るでしょう。
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